【PS4】『Detroit: Become Human』レビュー – 紛うこと無きマスターピース、Quantic Dreamの到達点

【PS4】『Detroit: Become Human』レビュー – 紛うこと無きマスターピース、Quantic Dreamの到達点

『Detroit: Become Human(デトロイト ビカム ヒューマン)』クリアしました。見事に土日が完全消滅しました。とてつもない、素晴らしいゲーム体験でした。あらゆる人にプレイしてほしいので、気合いを入れてレビューをしようと思います。

というわけで、この文章は始めから終わりまで「『Detroit: Become Human』を買ってプレイして欲しい!」というパワーだけでモリモリと書かれたものです。

「そこまで言うならやってみるか」と思ったタイミングで、すぐページを閉じてPS Storeに向かってください。それ以上このゲームの情報を頭に入れることは、全て没入体験のノイズを増やす行為に他ならないからです。宜しくお願いします。

ネタバレ無し!ご安心を!

【プラットフォーム】PS4
【定価】7,452円
【クリア時間】11時間(1週目、難易度EXPERIENCED)
※全ルートコンプリートはまだできていません。レビュー時点のプレイ時間は20時間ほど。

作品紹介

『HEAVY RAIN』『BEYOND: Two Souls』の開発スタジオ『Quantic Dream』が4年の歳月をかけて製作した今作。膨大な分岐をカバーする脚本を書ききるだけで2年を要したと言います。

『Quantic Dream』は設立以来、一貫して「プレイヤーといっしょにストーリーを語っていく作品にする」ことを主軸にゲームを開発してきました。その結果たどり着いたのが、もはや「Quantic Dream節」と言っても過言ではない、「QTE特化」+「痛ましい決断を要求する選択肢」というアドベンチャースタイル。

QTEとは?
ゲーム内で画面に表示された特定のボタン・キーを入力をするイベントの一種。連打、コマンド入力、レバガチャ、タイミングが求められるものなど、形式は様々である。主にカットシーンやムービーの間で使用されることが多い。
出典:QTEとは – ニコニコ大百科

特に「主人公の一人が死んでもストーリーは続く」というキャッチーでわかりやすい特徴は、『HEAVY RAIN』発売時に大きな話題になりました。

↓『HEAVY RAIN』レビュー。

【PS4】『HEAVY RAIN -心の軋むとき-』レビュー ~ド級の没入!俺が死ぬ!~

その流れを汲んだ今作『Detroit: Become Human』では、3体のアンドロイドが主人公となります。

任務に忠実なアンドロイド捜査官『コナー』

シャットダウンから復帰し記憶が欠落した家政婦アンドロイドの『カーラ』

世間でのアンドロイドの地位の低さに不満を持ちながらも、自身は尊敬に値する主人に仕えている『マーカス』

ある事件を中心に、それぞれの思惑で行動する彼ら。やがて収束していく過程は、芸術的ですらあります。すれ違うその瞬間が近付いてくる場面の興奮。それをこのグラフィックレベルでやってしまうのは、他にはない、このゲームならではの魅力です。

QTE主導のゲームプレイ体験

ドアを押して開く

プレイは先述の通り、QTE主導で進みます。
ドアを開けるなら右スティックをぐりっと回し、電子書籍のページを捲るならタッチパットをスワイプする。あっ!敵が後ろを向いている!得物を持ってこっそり近づいて……コントローラーを振り降ろす!ガツン!クリーンヒット!

QTE捜査官

このゲームのQTEは「プレイヤーの没入感を高める」という明確な目的を持ってデザインされています。『HEAVY RAIN』『BEYOND: Two Souls』と蓄積されたノウハウが遺憾なく発揮され、気持ち良く違和感のないQTEが徹底されていると感じます。

「QTE」=悪というイメージが先行している気がしますが、是非そこは先入観を持たずやってみて下さい。ストーリーを進めていくにつれて徐々に主人公達と同化していくような感覚があり、操作に自然と力が入っていくはずです。食洗機がない限り、誰も○ボタンワンプッシュで皿を洗うことは出来ません。ゴシゴシと。ゴシゴシとこすらなければ油汚れは落ちないのです。

コレがQTE皿洗いだ!

“最高傑作”

舞台は2038年のデトロイト

ゲームの物語は比較的スローに始まります。エンジンがかかるのが遅い。序盤は自我をほとんど持たないアンドロイドとして、ささやかな決定を積み重ねていきます。この時点でのゲームプレイは、言ってしまえば退屈かもしれません。選択が直接世界に大きな影響を与えるわけではないし、後のストーリーにおいて意味を持ってくるのかもわからない。

しかし、この導入部分はプレイヤーを「2038年のデトロイト」に馴染ませるために必要不可欠なものです。

『コナー』として。『カーラ』として。『マーカス』として。
まずは「2038年のデトロイト」という仮想世界の有り様を見て回る。

アンドロイドが存在することで苦しむ人々もいる

これがないと、後のストーリーでプレイヤーが決断を下すための材料が足りません。それでも、プレイヤーに退屈さをできるだけ感じさせないよう、限られた空間に世界感を紹介するための情報・イベントが違和感なくギュッと詰め込まれています。ひたすら説明文を読ませるような妥協したつくりにはなっていません。このバランスには非常に苦労したはずです。

この「世界紹介」を経て暫くすると、各主人公の主たる目的が明らかにされます。ここまでしっかりとプレイしていれば、プレイヤーはこの世界のルールを理解し、主人公たちに感情移入できるようになっているはずです。

ここからは急転直下、心を抉るような選択が連続してプレイヤーに襲いかかります。何かを選び、代わりに何かを捨てる。二兎追って二兎得られることもある。一兎も得られないことも勿論ある。良かれと思ってやったことがことごとく裏目に出る。「これだけは守りたい」と思い選択したのに全てを失う。「倫理的に正しそうな」選択肢はありますが、実際のところ正しい答えは有りません。

全ての決断に対し、必ず意味のあるリターンが返ってきます。そしてそのリターンは、このゲームに真剣に没入すればするほど重いものとなる。何故ならそうすることを決めるのは、「あなた」だからです。

「結果」は他の誰でもない、自分の選択こそがもたらしたもの

言ってしまえば、「自我を持ってしまったアンドロイド」なんてありきたりで擦られ切ったテーマじゃないですか。でも、「全ての選択の結果、その責任を自分が取る」という一点が極限まで突き詰められると、こんなにも重みを持つ。私は感動しました。時として絶句し、安堵し、悔しい気持ちでいっぱいになりました。

このゲームは私にとっての最高傑作です。他の誰がなんと言おうと知ったこっちゃありません。

「たかがゲーム」と斜に構えず、是非主人公達とこの世界に真剣に向き合ってプレイしてください。無茶苦茶に疲れます。ですが、選択に後悔こそすれど、プレイした事自体に後悔はしないはずです。

『Quantic Dream』の提示する「自由度」

買い物しろ!

このゲーム、行動範囲自体はある程度決められています。それを指して「思ったより自由度が低かった」「もっと世界を見て回りたかった」という声もありましたが、そうじゃない。このゲームの「自由度」が目指すものはそうではないんですよ。

例えばですよ。

「イベントから離れて自由に街の果てまで歩いていく」
「意味なく突然自殺する」
「気に食わないキャラクターを脈絡なく殴り倒す」

これらにそれぞれ専用のカットシーンと結末が用意されていたとします。ものすごい自由度です。びっくりするでしょう。ですが、それで終わりです。このゲームの価値はそこには無い。開発リソースは無限ではありません。収集が付かなくなり、ここまで綿密なゲームにはなっていなかったでしょう。

「自我を持ったアンドロイド『変異体』の発生と、それに伴う世界の変容」という一連の事件に真剣に向き合う。その前提の元で、プレイヤーは心が痛む選択を連続して行う。『Detroit: Become Human』はプレイヤーの選択を受け入れ、あらゆる決定に対して、結果を妥協なく返す。

これこそがそのゲームが提示してくれる「自由度」であり、真にインタラクティブな、ゲームならではの体験だと思います。

3体のアンドロイド、その人生の一大事を駆け抜ける。真剣に考える上で候補に上がる全ての選択肢に対し、フィードバックが一枚絵ではなく一連のカットシーンでリアルタイムに提供される。こんなもの、このゲーム以外で体験するなんて絶対に出来ません。陳腐な表現ですが、記憶を消して何度でもプレイしたい、心からそう思います。

制作者が何を考えてこのゲームを生み出したのかについてはファミ通が読み応えのあるインタビュー記事を出してくれています。購入前に読んでも大丈夫な内容です。

生みの親デヴィッド・ケイジ氏に訊く。会社設立から『Detroit』を生み出すまでの道のり – ファミ通.com

没入を支える「映像」と「音楽」

常識離れした映像美、是非実機で

物語とその構成、見せ方に目が行きがちですが、それを支える要素として、ゲームを語る上で欠かせない「映像」と「音楽」。こちらも、非常に素晴らしい水準です。

グラフィック。もう一見にしかずということで言葉にするだけ野暮なのかもしれませんが、病的なまでの描き込みです。モニタという限られた枠の中ですが、プレイヤーに「ゲームの中」であることを意識させる要素を極限まで見せないぞ、という『Quantic Dream』の強い想いがビンビンに伝わってきます。

実写では出来ないことだけれど、限りなく実写に近い形で。

人間やアンドロイドのキャラクターはモーションキャプチャーからのモデリングで作成されているのですが、現実世界で『マーカス』を演じた役者さんを見たときは「マーカスじゃねぇか」と驚愕しました。もうゲームのリアルタイムレンダリング技術はここまで来てるのか、と。

さらには自販機、コンビニの店内、映画のポスター。全てのアイテムを妥協無く作り込み、そしてわずか15分程度のカットシーンのために豪快に使い捨てる。必然性がない限り、同じアセットの使い回しはありません。

ゲーム内のアンロックムービーに制作秘話がありますので、クリア後に見てみてください。きっともう一度プレイしてみたくなるはずです。

毛の一本に至るまで、一切の妥協を感じさせない

そしてサウンドトラック。このゲーム、3人の主人公でストーリーがガラッと変わるため、印象を変えるために各主人公を担当する3人の作曲家を起用しているんですよね。

ゲームプレイを邪魔せず、かつサブリミナル的に心に作用してくる作りになっていると感じました。それ自体が全面に出て主張してくるのではなく、あくまで演出を支える一要素としての音楽。「なんかドキドキするな、第六感か?」とアホ丸出しで暫くプレイしていると、「あっ、BGMか!」という。(私の耳が馬鹿耳という話でもあるんですが……)

作曲陣の熱意も並大抵のものではありません。例えば『コナー』を担当した作曲者は、『コナー』を表現できる楽器はこの世に存在しない、ということで新しく専用の楽器を作って音を出しています。「正気か?」と思いましたがどうやら正気のようで、「お陰で満足のいく仕上がりになったよ」とのこと。これがクリエイターという職業なんだと脱帽しました。2周目では馬鹿耳なりに意識的に音楽を聴くように心掛けてプレイしています。

ゲーム内のアンロックムービーに制作秘話がありますので、クリア後に見てみてください。きっともう一d(略

メニューから聴けるサントラ、アンロックすると作曲者の小話が読める

欠点にも触れる

と、手放しで延々と絶賛してきましたが……ここで極力真摯にレビューするにあたって欠点についても触れておきます。

まず、操作性。……ここは正直お察しくださいというレベルです。歩行がやけにグニャグニャして目的のオブジェクトに中々触れないことがままありますし、カメラが切り替わるタイミングでぐるぐる回ってしまうことも。これはもう『HEAVY RAIN』以来の伝統芸。「キャラクターの挙動があそこまでリアルなのに何故……」と頭を抱えずにはいられないのですが、モーションキャプチャーした素材をスティック操作に落とし込むのが難しいのでしょうか。

ウロウロ

また、選択肢の多くが単語紋切り型なので意図しない結果が返ってくることがあります。例えば、「怒り」という選択肢が何に対して怒っているのかわからない。うまくいかない現状への苛立ちを表明するつもりで選択したところ、突然会話相手に怒鳴り始め、「ウッ」となりました。大して重要でない場面だったのが不幸中の幸いでしたが、全ての選択肢にせめて目的語を入れてほしかったですね。「Aへの怒り」みたいな。

無口?

最後、「フローチャート」。チャプターの合間に挟まり、「何%の人たちがこのルートを選びましたよ」というのを教えてくれます。ただ、これはクリアまで見えないほうが良かった。未解禁のルートは隠してくれるのですが、各ルートの枝の長さでなんとなく展開が透けて見えます。ゲームをやってる感じがして現実に戻ってしまう。嫌だなぁと思っていましたが、後で「フローチャートを見ない」という解決策に気付きました。個人的には目をつぶって飛ばしたほうが良いと思っています。

フローチャート
フローチャート(の一部端っこ)

まとめ

というわけで欠点にも触れましたが、それらを全て補って余りある魅力を持つゲームであることはここまで説明したとおりです。

書きたいことは全て書きました。あとはもうこれを読んで一人でもプレイしてくれる人が現れるのを祈るばかりです。

『Detroit: Become Human』はPS4で発売中です。是非何らかの方法で手に入れてプレイして下さい。そして、もし良ければゲームの感想をこっそり教えてくれると嬉しいです。

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↓ダウンロード版(PS Store)

Detroit: Become Human