『Splatoon2 オクトエキスパンション』レビュー・考察 -スプラトゥーン2の足りないピース、最高のシングルプレー

『Splatoon2 オクトエキスパンション』レビュー・考察 -スプラトゥーン2の足りないピース、最高のシングルプレー

オクトエキスパンション、完全クリア……から早二ヶ月。

この記事も下書き倉庫で2ヶ月近く眠っておりいい加減に腐臭を発し始めたので、バシッと書き上げて公開するぞオラ!!

※『スプラトゥーン2』をプレイしたことがある方向けの内容になっています。

【プラットフォーム】Nintendo Switch
【価格】1,944円
【クリア時間】10時間
※購入には『スプラトゥーン2』本編が必須

「ヒーローモード」からの大きな進歩

元々、任天堂から『オクトエキスパンション』が発表されたとき、私自身あまり食指が動きませんでした。言っても新しい『ヒーローモード』でしょ?と。ヒーローモードではラストこそ圧倒的演出に感涙しむせび泣いたわけですが、プレー自体はあまり面白くはなかったので…

ところが、『オクトエキスパンション』が発売するや否や、購入した友人がうるさいぐらいにタコの魅力を激推ししてきます。

あまりの熱意に根負けしてやってみたところ……。びっくりしましたよね。ヒーローモードは何だったんだと。オマエどうしたと。感謝の土日クリア。任天堂に感謝の正拳突きをしていたところレビューを書くのが遅くなりました。タイトル通り、この『オクトエキスパンション』で『スプラトゥーン2』は素晴らしいシングルプレーモードを手に入れて完成したという印象を持ちました。それだけ素晴らしい内容でした。

何がそんなに良かったのか?ウンウン唸って考えてみました。少々お付き合いください。

わんぱくシューティングアクションタコ

まず、『オクトエキスパンション』(以下『オクト』)は一義的にシューターではありません。

あっ、「わけわからんこと言い出したぞ、帰ります」などと言わず聞いてください。

『オクト』は、地下鉄駅に行き倒れ、キオクを失ってしまった「8号」が地上を目指してガンバるというお話です。その過程でヒーローモード同様に様々なステージにチャレンジしていくわけですが、これらのステージは基本的に「シューター」ではなく「アクション」が主体になるようにデザインされています。プレイ感覚はどちらかというと『マリオ』に近い。

武器は持っていますが、あくまでアクションの種として機能するように全体が設計されています。なんなら武器すら無いステージもある。「シューティングするためにアクションする」のではなく「アクションするためにシューティングする」、シューティングアクション。

スタイリッシュ!

ヒーローモード、「シューターとして武器を使わせること」を大前提とした作りにした結果、設計上の縛りが増えすぎて物足りなさに繋がったと思うんですよね。ヒーローモードでは、全てのステージを全武器種で攻略することが出来ました。が、それは裏を返すとすべての武器種でクリアできるようにステージを設計しなくてはいけなかったということです。その為、「撃って倒して進む」という大味設計がプレー全体を支配し、変化の無さをステージの複雑さで補うような作りになっていたと思います。ですが、そもそも武器を使用することはゲーム攻略の「手段」であり「目的」ではないはずです。

どんな手段でもクリアできるようにするっていうのは、一見自由度が高く素晴らしいことのように思いますが、相当慎重に調整しないと「どうやっても一緒」に繋がってしまいます。普通、ゲームっていうのは設計者が「こういう体験ができたら面白いだろう」と思いながら作っていますよね。ゴリ押し突破ができてしまうと、基本的には「味気なさ」を感じてしまうはずです。そこには「意図」が存在しないので。

『ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド』では、謎解きをさせるミニダンジョンである「祠」において、解法の自由度の高さが話題になりました。

後からインタビュー等で明かされたのが、「祠を制作する際には3つ以上の解法を用意することが決まりになっていた」というお話。「ゴリ押し突破」や「裏技」と言われるものについても、そのほとんどが開発陣の「意図」に含まれていたんですね。

滝澤 ズルをやると、謎を解いたときや、敵を倒したときの『ゼルダ』ならではの“してやったり感”がいつもより高い、ということに気づいてからは、だいぶおおらかになりましたよね。
藤林 そうすると、つぎはプランナーが裏をかかれたように見せかける仕掛けを張っておいたりするんですよ。「ほらいま、してやったと思ったでしょう?」みたいな(笑)。そんなふうに、いろいろな場所や謎解きに、プランナーや地形デザイナーの仕込んだ意思が隠されています。

――ミャマ・ガナの祠の、ジャイロ機能で迷路を傾けて、球を転がして運ぶ仕掛けは、とても話題になりましたよね。迷路自体を裏返しにしてしまう解きかたも、想定内だったのですか?

藤林 じつは想定していました。最初は、迷路の裏面に溝が掘ってあったんです。「ひっくり返して溝に入れたら、簡単にクリアーできますよ」と。でも、さすがにそれはあからさますぎたので、溝自体はボツになりました。

『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』祠の解法は3つ以上!? DLC&新作も聞く、アタリマエを超えた驚異の作品作りに迫る開発者インタビュー【後編】より引用

「意図」をハッキリクッキリわかるようにする工夫っていうのはどうしても必要だと思うんです。

縛られないタコ

ひるがえって『オクト』は、「全武器種でプレイ可能」という設計上の縛りをバッサリ切り捨てました。

「あらゆる武器で攻略出来るステージを作る必要がある」→「こういうアイデアがある」
ではなく
「こういうアイデアがある」→「この武器構成でプレイさせれば実現できる!」
という具合に設計の順番を逆にした結果、製作者が何をさせたいのか、プレイしてすぐに分かるような作りになったと感じます。

例えば、指定の武器で箱の塊を破壊していき、お題と同じ形になるようにくり抜いていく「型抜き」ステージがあります。指定武器は三種類、簡単な(報酬が安い)順に「チャージャー」「シューター」「ブラスター」です。これらは、以下のような意図で選ばれていることがすぐにわかります。

チャージャーなら「狙った箱を丁寧に壊す」(かんたん)
シューターなら「弾のブレもある程度意識する」(ふつう)
ブラスターなら「余計な箱を爆風に巻き込まないように調整する」(むずかしい)

これは一例ですが、全体を通して、こうした「意図」を伝達する仕組みがしっかりと出来ていたな、という印象です。

「選択と集中」に成功したタコ

地下鉄の車両内で拠点機能は完結している

根底の考え方だけでなく、細かい部分も様々な変更が行われています。

ヒーローモードで存在していた拠点マップについてもほぼ廃止されました。これ『1』から疑問だったんですよね。早くステージに入ってプレーしたいのに、そのステージを見つけるまで拠点で探索を強いられる。『オクト』は最小限の拠点機能が狭い電車内にまとまっているので、プレー時間のほとんどを、ステージ攻略に費やすことができます

また、ヒーローモードに存在していた「イリコニウム(ニボシ)」「ミステリーファイル」といった、ステージ中での探索要素も全撤廃となりました。ヒーローモードではこれらの探索アイテムが存在することで金網の裏や壁の向こうを毎回探索する動機が生まれましたが、これが完全にテンポを阻害していました。「探索する楽しみ」というのはあると思いますが、それはあくまでサブの要素です。そのためにプレイフィールの良さからくる「動かす気持ちよさ」や「ステージ攻略の楽しみ」といったメインの要素を阻害してしまっては本末転倒です。

『オクト』では、探索アイテムに代わるやり込み要素として、「ネリメモリーズ」というものを用意しています。『オクト』は難易度が高く、挫折したプレイヤーのために「クリアしたことにする」機能があります。一方、自力でクリアすると「ネリメモリーズ」がもらえる、という仕組みです。これぐらいでちょうどいいのです。なぜなら、ステージ攻略そのものこそが『オクト』の肝であり、一番楽しく、別の要素で阻害されてはいけないものだからです。

自力クリアの証、「ネリメモリーズ」

あれも、これもとやろうとした結果全体がぼやけてしまったヒーローモードに対し、「選択と集中」がキレイにハマったゲームが『オクト』である、私はそう考えています。

まとめ

こうした工夫に加えて、脇を固める音楽、演出、キャラクター。元々言うまでもなくレベルが高かったこれらの要素とゲームデザインが渾然一体となって、素晴らしい体験を生んでくれました。

今回の『オクト』では、これまでやんわりとしか語られていなかった「ナワバリバトル」以前の空白の歴史に多少なりのフォローが入っていますが、その空白にはまだまだ埋める余地があります。それが語られるのは『3』になるでしょうか。

今作の出来栄えを見ていると、今から次の新しい「ヒーローモード」をプレイするのが楽しみですね。期待が高まります。

以上、スプラトゥーン2 追加DLC『オクトエキスパンション』のレビューでした!

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